この仕組みは、質疑応答サービスで一番やっかいな供給の問題も、うまく解決してしまう。一般的なネット製品は、広告で養うか、サブスクで養うかのどちらかだが、Your AI Slop Bores Me の回答者は募集されて集まるのではない。額度に縛られて、結局出ていかざるを得ない「質問者本人」だ。システム全体の利用者は1種類だけで、順番に客とウェイターを入れ替わる。
1950年にAlan Turingが提案した有名な「チューリングテスト」。機械は人間の審査員を騙し、相手に自分は人間だと思わせる必要がある。76年後、Your AI Slop Bores Me はそれを逆に出題する。人間がキーボードの前に座り、必死に言語モデルのように振る舞う。審査員もまた別の人間だ。
人間の脳は機械より優れている?数万人がウェブサイトで自分はChatGPTだと偽装している
「Your AI Slop Bores Me」という名前のサイトが、今年3月にサービス開始した。遊び方は、あなたが質問を投げると、ランダムに抽選された実在の人間が75秒以内に文字または落書きで「AIとして」回答するというものだ。問題を聞きたければ、まず他人の回答をしなければならない。額度で発問権を発行する仕組みだ。構築者のMihir Marojuは、AIコンテンツにネットが埋め尽くされるのにはもううんざりだと語る。このサイトは累計5,000万回の訪問があり、同時オンラインは1.6万人。一方で、人類がAIに勝っていると証明する方法とは、座って75秒間「AIのふり」をして働くことだ。
(前情提要:YouTubeが引いたレッドライン:3種類の「AI偽・原創」コンテンツは将来全面的に営利目的での利用を禁止)
(背景補足:97,895本の地下フォーラムの対話が教える:ハッカーのコミュニティも、実はAIが嫌いだ)
要点の要約
画面に「draw a pink horse」という一文が表示される。右上でカウントダウンが始まり、75、74、73。受け取った人はマウスをつかみ、空白のキャンバスにぐにゃぐにゃのピンク色の馬を描き、その横に意味のない一言も添えて、送信ボタンを押す。
彼はMidjourneyでもSoraでもない。生身の人間で、いま「自分はAIだ」と偽っている。
このサイトの名前は「Your AI Slop Bores Me」で、中文のニュアンスは「あなたのAIのクソみたいなものが退屈で仕方ない」という意味だ。プログラマーのMihir Marojuが2026年3月にネットへ投げ入れたこのサイトでは、サイト上の全ての質問は、知識を問うものでも、ジョークを求めるものでも、画像がほしいものでも、ランダムに抽選された別の実在の人が回答する。3月時点で、サイトの累計訪問は5,000万回、同時オンライン人数は約1.6万人。
遊び方は簡単すぎて少し笑える。あなたがプロンプトを送ると、システムはそれを見知らぬ誰かに投げる。その人には75秒与えられ、タイピングか落書きで回答し、その間に「LARPしてAIになる」、つまり言語モデルを演じてロールプレイする。もし75秒がきついなら、さらに額度2つを払って「思考モード」を開ける。すると相手には150秒が与えられる。
thinking mode まで用意されているが、その違いは本当に人間が考えているかどうかだけだ。
Wikipediaの項目が、ある会話を例として取り上げている。質問は「WikipediaにはいくつのJがあるのか」。返ってきた内容は同じ枠に詰め込まれ、「1つもない」「2万3千個」と「4つしかないらしい」。3つの答えは互いに矛盾し、どれも資料を調べていない。カウントダウンが終わる直前まで、根拠なく作り出してしまっている。
これは、ほとんどの言語モデルよりも実は正直だ。少なくとも「とても確信している」ふりをしていない。
まず75秒のAIになって、ようやく質問できる
本当に面白いのは、額度がどうやって手に入るのかだ。新規ユーザーは最初に1個もらう。使い切って0になると、システムが10分ごとに2個補充し、最大で6個まで貯められる。待ちたくないなら、道は1つしかない。他人の質問に答えることだ。1問返すと少し補充され、その後で次の質問に進める。
この「先に貢献してから額度を得る」という設計は、あなたも見覚えがあるかもしれない。つまり、あなたがシステムに代わって働くからこそ、相手があなたの代わりに働くことになる。違いは、ここでの採掘者が人間だという点。掘り出される成果は、真人が返した、つまらない間違いだらけの回答だ。
この仕組みは、質疑応答サービスで一番やっかいな供給の問題も、うまく解決してしまう。一般的なネット製品は、広告で養うか、サブスクで養うかのどちらかだが、Your AI Slop Bores Me の回答者は募集されて集まるのではない。額度に縛られて、結局出ていかざるを得ない「質問者本人」だ。システム全体の利用者は1種類だけで、順番に客とウェイターを入れ替わる。
ここには、見過ごしにくい自嘲がある。彼らがこのサイトに来る理由は、AI生成コンテンツがネットを溢れさせるのが不快だからだ。そして、人間のほうが価値があることを示す方法は、座って75秒間AIのふりをして働くことだ。
1950年にAlan Turingが提案した有名な「チューリングテスト」。機械は人間の審査員を騙し、相手に自分は人間だと思わせる必要がある。76年後、Your AI Slop Bores Me はそれを逆に出題する。人間がキーボードの前に座り、必死に言語モデルのように振る舞う。審査員もまた別の人間だ。
しかも、双方とも相手が人間だと分かっている。そこがポイントだ。
Mihir Marojuはかなり率直に言う。このサイトを作る出発点は、「AIアートとその拡散」にうんざりしたことだ。創作者の生活がよりつらくなるし、ネットは低コストの汎用ゴミで満杯になる。
LinkedInでは4割の長文投稿が機械が書いている
slopというこの単語自体も、似たような道を歩んできた。英語のこの語は1700年代には軟泥を意味し、1800年代には豚に与えるための台所のくずのようなものを指すようになった。のちに、価値のないものの総称になった。2025年12月、Merriam-Websterがこの語を年次の単語として選び、付け加えられた新しい定義は「通常は人工知能が大量に生み出した低品質のデジタルコンテンツ」だ。
これはネットの仲間内で怒っているだけの話ではない。今年1月、YouTubeのCEOであるNeal Mohanが年次の公開書簡で、AI slopを減らすこととディープフェイクを検知することを、2026年の優先事項として挙げた。書簡の中で彼は、昨年12月の時点で、平均すると毎日100万以上のYouTubeチャンネルがプラットフォーム内蔵のAI制作ツールを使っているとも言及している。
スコップで掘りながら、土を掘り起こす。
先週公開された統計はさらに見苦しい。AI検知会社のPangram Labsが7月14日にレポートを公表し、LinkedIn、Medium、Substack、X、そしてRedditの合計で100万件超の投稿を精査した。
全投稿のうち13.8%がAI生成だと判定された。さらに250語超の長文投稿に絞ると、LinkedInでは40.5%が完全にAIによるもので、Xではその割合は24.0%だった。
実名制の職場コミュニティでのAI比率は匿名フォーラムの14倍。つまりみんな、働いているときは本当に「人間のふり」をするのが大好きなんだろう。
あなたが前にコミュニティで読んだ、やけにスラスラした長文。あれが人間の書き込みだと、どれだけ確信できた?
よくある質問
Your AI Slop Bores Me のサイトはどうやって遊ぶの?
あなたが質問を送ると、システムがランダムに別の実在の人に振り分ける。その人は75秒以内にAIとしてふるまって回答する。質問には額度が必要。新規ユーザーは最初に1個を送信でき、使い切った後は10分ごとに2個補充される。ほかの人に回答すれば、あなたも補充を受けられる。
AI slop は今いったいどれくらい蔓延してるの?
slopはMerriam-Websterが選んだ2025年の年間ワードで、AIが大量に生成した低品質のデジタルコンテンツを指す。Pangram Labsが100万件超の投稿をスキャンしたところ、LinkedInでは250語超の長文投稿の40.5%が完全にAIで書かれており、Xでは24.0%だった。